イランで1月、ウクライナの旅客機がミサイルの誤射で撃墜された事件をめぐり、イランの航空当局は23日、記者会見を行い、ブラックボックスから回収されたデータに「最長19秒」の操縦室内の会話が含まれていたと明らかにした。2基目のミサイルがウクライナ機に命中したのは1基目の25秒後だったという。
乗員乗客176人全員でウクライナ機は離陸直後に撃墜され。当初は技術的な問題で墜落した可能性も指摘されたが、その後、イランの革命防衛隊が同機に向け2基の地対空ミサイルを発射したことを認めた。AP通信によれば、ウクライナ機をミサイルと誤認したのが原因とされる。
事件当日、イランからイラク国内の空軍基地など複数の標的に向けてミサイル攻撃が行われた。これらの攻撃についても、革命防衛隊は関与を認めている。
イラン航空当局の責任者によれば、ウクライナ機の操縦室にいた2人のパイロットと1人の教官の会話が、最初のミサイルを被弾した直後の「最長で19秒間」にわたって残されていたという。
「同機は25秒後に2基目のミサイルを被弾した。(パイロットたちは)最後の瞬間まで航空機を操縦していた」と責任者は述べた。
またAP通信によれば、記者会見では1基目のミサイルの爆発で飛んだ破片によって記録装置が損傷を受けた可能性が指摘されたという。
ブラックボックスのデータからは、同機は被弾する直前まで「通常の航空路を」飛んでいたことも明らかになった。
「この(最初の被弾の)瞬間、電気的問題が起きて、教官の指示で補助動力装置のスイッチが入れられた。両方のエンジンは爆発から数秒間は動いていた」とこの責任者は言う。
「その時、客室からは何の物音も聞こえなかった。録音は19秒後に止まった」
操縦室内の会話についてそれ以上の詳細は明らかにされなかった。
誤射について、7月に出された中間報告書では、ミサイルのバッテリーの取り付けミスや、指揮官と隊員の間の連絡の不備、上官無視などの原因が重なった可能性が指摘されたとAP通信は伝える。
ミサイルのバッテリーの取り付け位置が変更され、正しい向きに装着されなかった。担当の兵士らは司令センターと連絡を取らなかった上、ウクライナ機を脅威と誤認し、上官からの許可も得ず2度にわたってミサイルを発射した可能性があるとされたという。
ブラックボックスは国際調査チームの手で解析するため、6月にパリに送られた。
解析には撃墜による犠牲者の出身国(アメリカ、ウクライナ、フランス、カナダ、イギリス、スウェーデン)の関係者も参加したと、イラン航空当局は明らかにしている。
航空当局の責任者は「データの取り出しはあくまでも安全と類似の事件の防止を目的に行われた」と述べるとともに、「このプロセスのいかなる政治的利用」もすべきではないと牽制した。
またAP通信によれば、この責任者はイランの空域について「(外国の航空機を)受け入れる準備が整っており安全だ」と主張したという。
一方、国連制裁復活の動きなどトラブルが続く。
イランでは新型コロナウイルスの大規模な流行が起き、ジョンズ・ホプキンス大学のデータによれば死者数は2万人を超え、中東で最多、全世界でも第10位となっている。
コロナ禍においてもアメリカからの経済制裁は続いており、イラン外務省の報道官は4月、これを「医療テロ」だと非難した。
報道官はトランプ政権が「経済・医療テロによりイラン国民の健康を危険にさらして」おり、「人道に対する罪を犯している」と述べた。
これに対しトランプ政権は、医療機器は制裁の例外扱いとなっているとして、報道官の発言を一蹴している。
8月19日、ドナルド・トランプ米大統領は、2015年のイラン核合意で解除された対イラン国連制裁の復活に向けた手続きに入ったと明らかにした。ちなみにアメリカは2018年に核合意から離脱している。
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