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中国企業受注の「突如白紙化」…総額100億ドル、フィリピンで鳴り物入り空港拡張計画

 フィリピンがルソン島マニラ首都圏南西郊のカビテ州で進めていたサングレー空港の拡張整備工事計画について、1月27日、地元カビテ州政府は、中国企業とフィリピン企業に決まっていた受注を白紙化することを明らかにした。



同計画は中国の「国有中国交通建設集団(CCCC)」と、フィリピン大手財閥LTグループ傘下の航空会社「マクロアジア」と企業連合が応札の結果、昨年2月に受注していた。それが突然、取り消されることとなった。


■ 中国企業の受注白紙化の理由が「書類提出の不備」? 


地元メディアが入手した白紙化を伝える文書では、キャンセルの理由について「複数の不十分な手続き上の問題」と抽象的に記されており、「最終期限までに完全な必要書類の提出がなかった」などの手続き上の問題と見られてはいるが、明確な判断根拠は示されていないという。


一方、受注を取り消された中国CCCCは、建設エンジニアリング業界において世界で五指に入る大企業であると同時に、「一帯一路の主契約企業の一つ」(米国のマイク・ポンペオ国務長官=当時)と目される企業集団でもある。実際、その関連企業がフィリピンと中国が領有権を争う南シナ海で、中国側が複数の島嶼に建築物を建造した事業に関係していたとして、昨年8月に米政府はCCCCを「制裁対象」に指定している。そうした事業が、今回の受注取り消しと関係しているのではないか、との見方も取りざたされているのだ。



フィリピン側の今回の措置に対して中国外務省は今のところ、「中国とのビジネスでの公正で公平な措置を堅持してほしい」と釘を刺すにとどめている。フィリピン側は「今後改めて入札を実施したい」としており、サングレー空港の拡張工事そのものは継続される見通しだ。


サングレー空港は元空軍基地で、近傍には海軍基地も存在するだけに、拡張工事に中国企業が関わることについて安全保障上の問題も指摘されていた。それだけに、今回の突然の白紙化が「CCCCという中国の事業主体」、あるいは「中国」の参画そのものの排除を意味するものなのか、それとも単純に手続き書類上の理由なのかを巡って謎が深まっている。


■ 総額100億ドル、鳴り物入り空港拡張計画


1月27日、カビテ州政府は入札選考委員会の通告に基づくとして、サングレー空港拡張事業計画を26日付けでいったん白紙化することを決めたことを、事業を受注していたフィリピンの大手財閥系航空関連事業会社「マクロアジア」に通達したことを明らかにした。



「マクロアジア」は中国のCCCCと合弁で、総額約100億ドルの同事業計画の第1期拡張事業(約43億ドル)を受注していた。


同事業計画は、慢性的な過密状態にあるマニラのニノイ・アキノ国際空港の混雑緩和などを目的とし、滑走路の増設、空港の拡張などの整備案が地元カビテ州政府から出されていた。


マニラ首都圏周辺ではサングレー空港の拡張計画以外にも複数の空港整備計画が進行中だが、いずれも過密状態にあるニノイ・アキノ国際空港の負担軽減が急務となっていることが背景にある。


サングレー空港は元空軍基地だったが2019年からは主に民間貨物輸送の空港として利用されている。空港近くにはフィリピン海軍の基地もあることから、拡張事業計画への中国企業の参画は「安全保障上の問題がある」との指摘も出ていた。



こうした懸念を払しょくするために、カビテ州のジョンビック・レムリヤ州知事は2019年12月に空軍に対して「拡張整備するサングレー空港を再び基地として使用するよう要請した」ことを明らかにし、空軍も駐留する軍民共用の空港として整備する意向も示していた。


■ 中国交通建設の関連企業は米国の制裁対象


サングレー空港の拡張計画は2019年から本格的に進められ、2020年2月にCCCCとマクロアジアが受注した。この際応札した企業連合体が唯一だったために受注が決まったという経緯がある。つまり州政府側にしてみれば「他の選択肢」がなかったということである。


受注後もフィリピン側のマクロアジアの資金力やCCCCという中国国有企業による参画への不安や懸念が噴出して、計画の前途に対する不安の声も出ていたという。



今回のキャンセルは「書類上の不手際」がこれまでのところ理由とされているが、CCCC傘下企業が南シナ海を巡って2020年8月から米政府による制裁対象になっているとの指摘もあった。


ただドゥテルテ大統領は、米トランプ政権による制裁対象が明らかになった際に、「米政府の制裁対象となった企業が関与するフィリピンでの事業はこれまで通りに継続される」と述べている。


さらにハリー・ロケ大統領府報道官も2020年9月に「われわれはいかなる外国勢力の支配下にあるわけではなく、フィリピンとしての国家的な関心を追求するだけだ」と発言して、「制裁」に関しては米政府とは一線を画す姿勢を明確にしていた。


そうした経緯を踏まえれば、CCCCがアメリカの制裁対象企業になったことが今回の受注取り消しに結びついたとは考えにくい。



ただCCCCとマクロアジアの合弁会社の受注が決まった時期は、米国は東南アジア重視路線を後退させていたトランプ米政権の時代である。今年1月20日にそのトランプ政権に代わってバイデン政権が誕生した。そのバイデン政権下の米国との「関係改善」を見据えたドゥテルテ大統領の外交的思惑が今回の「白紙撤回」になんらかの影響を与えたのではないか、との見方も浮上している。


■ 直前には王毅外相がフィリピン訪問


一方で、今回の事業計画白紙化の直前でもある1月16日には中国の王毅外相がアフリカ、東南アジア諸国歴訪(ミャンマー、ブルネイ、インドネシア)の最後にフィリピンを訪問し、ロクシン外相やドゥテルテ大統領とも会談している。



これは中国が進める「ワクチン外交」の一環で、フィリピンに対しては王毅外相が50万回分のワクチン提供を直接伝えて、両国関係のさらなる親密化を内外に印象付けることに成功している。


さらにこの訪問で王毅外相とフィリピン政府は、ルソン島中西部にあるかつて米軍が駐留していたスービック(海軍基地)とクラーク(空軍基地)を結ぶ全長約70キロの貨物鉄道建設計画などの大規模インフラ整備事業への財政的支援実施についても合意している。


こうした経緯を踏まえると、サングレー空港拡張計画が白紙化に至る背景には純粋な経済的理由や手続き上の問題以外にも、外交的な思惑に加えて、国内の政治的な意図も絡んでくるなど複雑な要素も潜んでいるとの見方もでている。


つまりカビテ州政府当局が指摘する「3、4カ所の書類上の不備の問題」だけが、白紙化の本当の理由とは受け止められていないのが実情なのだ。


白紙化を受けてレムリヤ州知事は、「2020年10月までに改めて受注先を選定して事業を進めたい。次はより質の高いパートナーと進めたい」と述べている。この「より質の高いパートナー」が中国側のCCCCとは別のパートナーを示しているとみられていることも、あらゆる憶測を呼ぶ一因となっている。


中国外務省の趙立堅報道官は白紙化の報道を受けて、「個別具体的な交渉には関与しないが、中国政府は国有企業のフィリピンにおける法と規則に基づく活動を支援していることを強調したい」とした上で、「両国の共通の利益に従った環境が公正で公平に中国ビジネスにも与えられることを願う」と述べてフィリピン側を暗に牽制した。


10月に再度受注先を決めるというが、果たして再び中国側が応札するのか、そしてどの企業連合体が最終的に受注するのか。米国の国務長官から「一帯一路の主契約企業の一つ」と名指しされるほどの企業を国内インフラ事業から引かせることで、フィリピン政府は中国から距離を置こうとしているのか。


バイデン政権になったばかりの米国も注視しているであろうこのプロジェクト。次回の入札で果たしてどのような結果が出るのか、世界が固唾を飲んで見守っている。

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