Osimiニュースへようこそ (^_^) 良い一日を

国際会議「17+1」…中国メディアが自賛した欧州切り崩し戦略の現在地

 日本ではあまり知られていないが、俗に「17+1」と呼ばれる国際会議が存在する。ギリシャに中東欧16カ国を加えた17カ国に中国で構成される、経済協力関係を模索する会合である。正式名称は「中国中東欧国家合作」と呼ばれ、邦語では中国中東欧首脳会議という訳が当てられている。中国の習近平国家主席が「一帯一路」構想を公表する直前の2011年から年に一回、総会が実施されてきた。



中国が中東欧諸国との経済協力関係を重視している最大の理由は、中国が中東欧諸国を欧州連合(EU)への影響力を拡張するうえでの「足場」として重要視していることがある。中東欧諸国を固めてから本丸である西欧諸国に進出したいというわけだ。実際に中国は中東欧諸国のいくつかの開発プロジェクトに投融資を行ったが、実態としては中国の思惑通りにことは進んでいない。


2020年は新型コロナウイルスの感染拡大のため開催が見送られ、2021年2月9日にリモート形式で実施された。中国側のメディアでは中東欧諸国と中国の経済協力関係の深化が強調されているが、欧州側のメディアではむしろ中東欧諸国と中国との間で温度差が大きくなっていることを強調する論調が目立つ。実際に、中東欧諸国の中では中国に対するスタンスが分かれ始めているようだ。



現に2月の「17+1」サミットでは、中東欧のうち6カ国で首脳が参加せず、高官を派遣するにとどまった。具体的にはブルガリア、エストニア、ラトビア、リトアニア、ルーマニア、スロベニアの6カ国が、首脳の参加を見送った。いずれの国々もEUの加盟国であるが、特に親EU的であり、中国に対してスタンスを厳格化させているEUと歩調を合わせる形で首脳の参加を見送ったことになる。


■ ワクチン外交に屈した西バルカン諸国


近年EUは、安全保障上の理由から中国に対する警戒スタンスを強めている。2月の会議に首脳の参加を見送った6カ国としては、そのEUと歩調を合わせることによって、EUからの支援をフル活用したい思惑があると考えられる。具体的には、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて悪化した経済の復興を促すEU復興基金からの支援を、上記6カ国はフル活用したいと考えているはずだ。



なお、同様の思惑がイタリアにもあるようだ。2月19日にイタリアの新首相に就任したマリオ・ドラギ氏は自身が欧州中央銀行(ECB)の前総裁ということもあって、生粋の親EU派である。そのため新政権は、それまでの反EUポピュリズム政権とは一線を画して親EUスタンスを強めているが、そこには同時にEU復興基金からの資金援助を可能な限り引き出したいという思惑も見え隠れする。


他方で、政権が権威主義的な性格を強めるヴィシェグラード諸国(ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの4カ国)のうち、チェコは依然として嫌中的だが、ハンガリーとポーランドはむしろ中国に接近した。両国は中国からの開発支援のみならず、中国製の新型コロナワクチンの供給に期待を寄せている。復興基金の活用をめぐって、EUは「法の支配」などEUの普遍的価値観を軽視するヴィシェグラード諸国に圧力をかけたが、その意趣返しともいえる。



さらに、まだEUに加盟していない西バルカン諸国も、中国に接近している。盟主的存在であるセルビアは1月中旬、欧州で初めて中国の製薬会社シノファームが開発したワクチンの供給を受けた。その隣国であるモンテネグロやボスニアに対しても、中国は積極的なワクチン外交を仕掛けている。EUからの支援が必ずしも見込めない西バルカン諸国にとって、中国は貴重な存在となったわけだ。


■ 西バルカン諸国の離反を招いたEUの痛恨ミス


中東欧諸国の多くは、第一次大戦後にオーストリア=ハンガリー二重帝国から独立、第二次大戦後は一様にソ連の影響下に置かれた経緯がある。そのため、十把一絡げに中東欧諸国という呼称が当てられているものの、必ずしも一枚岩ではない。その意味では、中東欧諸国がEUと中国によって「分裂」したというよりも、EUと中国という二つの極による引力の下で「二分化」したという表現の方が正しい。



親中色を強める西バルカン諸国の盟主であるセルビアとその隣国であるモンテネグロは、2025年のEU加盟を目指している。西バルカン諸国に対して中国は相応の投融資を実施、ワクチン外交もあって影響力を強めている。また西バルカン諸国は、シリアからを中心とする難民の移動ルートでもある。そうした西バルカン諸国を戦略的に取り込んでいくことは、EUが抱える安全保障上の優先事項だ。


EUはセルビアとモンテネグロのEU加盟を支援すると明言しておきながら、新型コロナウイルスの感染が拡大した際の初動対応で医療物資の提供を拒絶、代わりに中国がそれを提供する「マスク外交」を許すという大きなミスを犯した。巻き返しを図るEUは2020年5月のEU西バルカン首脳会議で西バルカン諸国に33億ユーロの財政支援を約束したが、「マスク外交」を許した後遺症は深刻だ。



それにセルビアの場合、2008年に袂を分けたコソボとの関係正常化をEUから迫られている。しかしアルバニア系住民が多数を占めるコソボはセルビア正教の聖地であるため、この問題でセルビアが譲歩し過ぎると国内の保守派が反発、EU加盟交渉が停滞する恐れがある。EUは適切なフォローに努めないとセルビアの態度が一段と硬化し、2013年のクロアチア以来12年ぶりとなるEU拡大に赤信号が灯る。


■ 実はEUも中国も当てが外れた中東欧戦略


「17+1」の実情を考えると、中国側のメディアが今回の会議が成功を収めたと評することには、やはり無理があると言わざるを得ない。とはいえ欧州側のメディアが強調するように、中国と距離をとり始めた中東欧諸国も現実的に出てきたが、一方で接近する国もあるという事実がある。EUと中国双方の思惑が外れる形で、中東欧諸国が二分化してきたというのが現実のところではないだろうか。



中国は西欧に勢力を伸ばすうえでの「足場」として中東欧諸国を位置づけており、いくつかの国は攻略しつつあるとしても、必ずしもその構想通りに、順調にことは進んでいない。他方でEUは、そうした中国の中東欧諸国に対する影響力を弱めることを狙っていたわけだが、反EUスタンスを強めるヴィシェグラード諸国やEU未加盟の西バルカン諸国の親中色を強めることを許した。


いずれにせよ、両者の思惑通りの展開とはなっていないことだけは確かだ。そのうえで、あえてどちらが優位に立っているかを判断するならば、それは「クチは出すがカネは出さない」EUというよりも、むしろ「クチは出すがカネも出す」中国ではないだろうか。「一帯一路」構想を撤回しない限り、中国は潤沢な資金を武器に、虎視眈々と欧州への伸長の機会を探ってくるはずだ。



他方でEUが、中国への対抗という観点から中東欧諸国に潤沢な援助を行うことなど考えにくい。特にまだEUに加盟していない西バルカン諸国に関しては、その重要性を強調するなら、本来ならより踏み込んだアプローチが必要となるはずだった。しかし、EUは今日に至るまで煮え切らない態度に終始、西バルカン諸国側も不信感を高めている。そうした綻びを、中国は今後も巧みに突いてくるだろう。

Share:

0 件のコメント:

コメントを投稿

ホット動画

注目のビデオ

Popular Posts

ブログ アーカイブ

最近の投稿

ページ